変わるインド

 次の特集を南インドにしたので目にとまるのだろうが、近頃やたらとインドという活字を見かける。それはおもに経済の分野で、今朝の朝刊の広告でも「Newsweek」が今週から2週連続でインド特集を組むという。その第1弾が「動き出す巨象経済」。ダイヤモンド社から出た「ハーバード・ビジネス・ビュー」(05/5月号)でも大がかりなインド経済特集を組んでいた。

 そうやって最近出た本・雑誌を検索してみると、インド経済の本が何冊も出ている。日本の経済界は中国ばかりに目を奪われているが、インドだってすごいんだぞ! という感じの内容であるようだ。「Newsweek」のインド特集の扉写真が、デリーでもタージマハールでもなく、バンガロールの繁華街だというところが、昨今のインドの取り上げ方を象徴している。

Newsweek」に紹介されている「炸裂するインドパワー」という図版では、インドのエコノミック・パワーが地図とグラフで示されているが、それによればインドは、2050年には中国、アメリカに次ぐ世界3位のGDPに成長すると予想され、しかも中国と比較しても若い労働者層が厚いので、より有望であることをアピールしている。

 そういえば、朝日新聞でも「インドと私」というコラムが連載されているが、そこでは病気になった評論家の石川好さんが、インドで治療した話を書いていて、彼は、将来インドは医療大国になるかもしれない、と書いている。

 おお、なんとインドの将来はバラ色なのか。

 しかし、ちょっと前までは、中国だって将来はバラ色だといわれていたが、なんだかあっという間に、そうともいえないんじゃないかといった懸念材料が出てきた感じがするので、インドだってわかったもんじゃない。が、とにかく経済成長を続け、多くの中産階級が誕生し、インドの様子が都市部を中心にどしどし変わりつつあるのは確かな事実であるようだ。

 インディラ・ガンジー首相が暗殺されたとき、僕はたまたまインドにいたが、その息子のラジブが首相の座を継いで、インドはインド式社会主義から経済開放へと進んだ。そのラジブも暗殺されてしまったが、経済開放への道は着々と進んで、本当にインドの風景が変わるところまでやってきたのだ。そのことがなんだか信じられない。

 昨年の10月にコルカタに行ったとき、表のチョーロンギー通りで、巨大な高速道路が建設されつつあるのに驚いたものだが、この高速道路はやがてインドの四大都市を結んでネットワークされるらしい。インドを高速道路で旅ができる時代になるなんて!

 中国も、ものすごくハードなスケジュールをこなして、見事にチベット鉄道を開通させてしまったが、インドも負けていないのだ。あるインド好きな先輩が、
「中国、中国っていってるけど、インド好きとしては、インドの高速道路にがんばって欲しいねえ」
とおっしゃっていたが、その気持ちは理解できる。でも、チベット鉄道に乗ってみたいですけど。

 まあそんなわけで、次号の取材に南インドへ行ってきます。怠けがちの当欄ですが、また2週間ほどお休みになりますので、よろしくお願いします。