ガイドブックの制作

 やっと本誌の制作が終わったのに、なんだかまだ忙しいのは何故なんだ。などと、遅れた言い訳をしながら書き始めているが、月刊時代にはほとんどなかった徹夜作業を、季刊になってから一日は半徹夜になっている。半徹夜というのは、一晩仕事を続けて、朝一番に印刷所に渡してから自宅に帰って眠るので半徹夜。そのまま仕事を続ける体力はもはやない。

 旅行人を本格的に始めた頃は、よく徹夜をしていた。もっとも苛酷だったのは初めての旅行人ノート『チベット』を制作したときのことだ。執筆者の長田さんは、うちの事務所にたしか2週間ほど泊まり込んだ。

 他の面々も1週間ぐらいはざらだったが、なんで泊まり込んでいるのかわからないのもいた。事務所の片隅でシュラフに入って、ぐっすりと8時間以上も眠るのだ。それだったら帰って寝たほうがよほどマシだと思うが、なんというか合宿みたいな雰囲気が濃厚だったのだ。

 当時は、コンピューターを導入したばかりの頃で、僕もソフトの動かし方などまったく知らなかった。ワープロソフトを1本だけ動かせた程度だ。しかし、人も時間もないなかで、社長の僕ができないではすまない。とにかく簡単な操作だけを教わりながら、地図を作り、レイアウトを組んでいった。

 僕は、これで制作に必要なソフトの使い方を学んだ。ガイドブックを制作したことで、本誌や単行本を作ることができるようになったのだ。始める前は、こんな難解なものはとても扱えないと恐れていたが、必要ならなんとか一応は覚えられるものである(それで、編集に入ってくる新人には、必ずガイドブックの制作を割り当ていた)。

 初めての旅行人ノート制作だったので、ミスも多く、時間もかかり、あちこち間違いだらけの本になってしまったが、体力も金も使い果たしてようやく『チベット』初版は完成した。達成感は大きかったが、この1冊で疲れ果てて、こういう作り方は二度と繰り返すまいと肝に銘じた。

 次号の予告にも書いたが、来年の初めにはひさしぶりにウルトラガイド・シリーズで『アッサムとインド北東部州』を出す。インド北東部州といってもどこかわからない人も多いかもしれないが(そんなところのガイドブックを出して売れるのか?)、インドの東のほうで、かつ、バングラデシュの北と東に位置している諸州のことである。最も有名なのが紅茶で知られるアッサム州だろうか。

 この地域はかつて外国人旅行者の旅行が禁じられていたが、近年はけっこう自由に旅できるようになっている。そんなに多くの人が旅するところではないが、少数民族や知られていないインドに興味がある人はいいかもしれない。まだ編集作業はこれからだが、興味のある方はご期待下さい。