ハードディスクの中で眠れ

 HDD(ハードディスク)レコーダーというのを買った。160ギガという、今では最も容量の小さなハードディスクだが、見るに耐える画質で録画しても100数十時間録画できるというので、これで不足はないだろうと思って(いちばん安いので)買った。

 これを買いに何年ぶりかに秋葉原へ行った。値札には59800円とあったが、隣りに置いてあるもう少し高いのには「お持ち帰りは3000円値引き」と書いてあったので、私も持ち帰るからまけてくれ、というと、あっさり1万円値引きしてくれたのには驚いた。言ってみるもんだ。

 いざ金を払おうとすると、店員が言う。
「お客様、2011年にテレビ放送が完全にデジタル化することはご存知ですね?」
「ええ、一応」
「そうなると、このデッキに入っているテレビ・チューナーは使えなくなりますので、それをご承知おき下さい」
「まったくの役立たずになるんですか?」
「いえ、チューナーは使えなくなりますが、外部からのデジタル映像を録画することはできます」
 つまり、あと6年でこのデッキはテレビ放送を受信できなくなるのである。うちのビデオデッキはだいたい5〜6年で壊れているので、まあ、その頃にはこのデッキも寿命かもしれない。

 それで使い始めると、確かにこれは便利な機械である。何がいいかというと、ハードディスクに入れておく限り、何を録画したかが一目瞭然にわかることだ。スイッチ一つで録画の一覧表が出てくる。したがって、これまでのように、どのテープに録画したのか、いちいちテープをデッキに差し込んで探す必要がないのが非常にいい。巻き戻しの必要もない。もちろんこれをDVDに落とせば、テープと同じことになる(だからラベルにちゃんと何を録画したかを書かなくてはいけないのだ。わかってる)。

 次にいいのが、画面に番組表が出てくることだ。これまでのように新聞の番組欄を見ながらGコードを打ち込む必要がなく、番組表の、録画したい番組を指定するだけで録画予約が設定される。Gコードはないのかと田中真知さんにきくと、まだGコードなんか使ってるの? あんなもの要らないよ、とバカにされたが、確かにこの番組表を使うと、せっかく馴染んでいたGコードは不要だ。短い命の技術だったことよ。

 追っかけ再生というのも使える。特に野球観戦に最適だ。だからヤンキースの松井が出てきて宣伝するわけだよなと納得した。今まではせっかく録画した野球中継も、野球が終わるのを待ってから見ると夜遅くなってしまうのと、たいていはその前にニュースで結果がわかってしまうので見る気にならなかった。

 それで、次々に映画を録画する。簡単だから。現在ハードディスクには、すでに見たものと、まだ見てない映画が、ざっと8本ばかりたまっている。それでもまだ20時間もないからハードディスクには余裕がある。しかし、どう考えても、見るのが録画するのに追いつかない。そのうちDVDに落とさなくてはにっちもさっちもいかなくなるのは目に見えている。

 で、そろそろDVDに落とそうかなと思うが、よく考えてみたら、まだ買ったけれど、見ていないDVDが数本あるのを思いだした。うーむ、やはりまだしばらくはハードディスクの中で眠っていてもらおう。