ライアン・エアー

 今回の旅行でライアン・エアーというイギリスの航空会社を利用した。掲示板でも話題になったことがあるのでご存知の方もいると思うが、この航空会社は、ものすごく安いことで知られている。

 どれくらい安いかというと、例えば(すべてロンドン発で)、デュッセルドルフグラスゴー、ダブリン、フランクフルトが0.99ユーロ! つまり140円もしないということである。初めて聞いたときには信じられなかった。

 1.99ユーロでロンドンから飛べるのが、ハンブルグブラックプール、2.99ユーロになるとベルリンまで飛べる。4.99ユーロだとオスロストックホルムまで飛べるし、5.99ユーロだとローマへ飛べる。キリがないのでやめておこう。

 それで、僕はラトビアのリーガからロンドンまで飛んだのである。しかしそれは0.99ユーロではなく、たしか50ユーロぐらいだったが。

 いったいなんでこんなに安いのだろうか。こんなに安くて本当に採算がとれるのだろうか。もちろん僕には、それで儲かるのかどうかはわからないが、この0.99ユーロの便は、かなり限定されたチケットであるようだ。まず、格安便の時間帯は、早朝か深夜便に限定される。あまりにも朝早い便だと、公共の交通機関で空港に行くことはできないので、自家用車で送ってもらえる人でないとメリットはないかもしれないし、深夜の便も、すでに地下鉄などが終了した時間帯に到着することが多いので、空港から市街地までの交通費もバカにならない。さらに、夏季シーズンでこの格安チケットを予約するのは大変なようである。

 しかし、条件さえ合えば0.99ユーロで乗れることは間違いないのである。0.99ユーロではなかったが、利用してみると、なるほどこういうふうにやっているのかと、その節約ぶりに感心することしきり。

 まず、チケットはない。インターネットで予約するEチケットなので、プリントアウトでチェックインする。すると番号札を渡される。これが飛行機に乗り込む順番の番号で、座席の指定はない。つまり全部自由席。国内線だったら自由席は経験があるが、国際線で自由席だったのは初めてのことだった。

 さらに、当然、無料の機内サービスは一切ない。有料ならビールや飲み物を飲むことができる。スチュワーデスがまわってきて、下敷きのようなものを希望者に手渡してくれる。これには機内で買えるものが掲載されているが、この下敷きは返却しなければならない。

 もちろん、この程度のことで1ユーロもしない料金で客を乗せられるわけがないだろう。他には、例えば空港からロンドン市街までのバスサービスを運営したり、ロンドンなどの宿を斡旋したりもしている。さらに、ロンドンで離発着する空港は、ヒースロー空港ではなくスタンステッド空港という。あまり馴染みのない空港だと思うが、元は貨物専用空港だったそうだ。ここはロンドンの中心からバスで1時間以上かかるので、多分発着料金が安いのだろう。

 ちなみに真夜中のスタンステッド空港に到着したわれわれは、まずロンドン市街までバス代を1人10ポンド支払い、さらにバスを降りたところからホテルまでタクシーに10ポンド支払ったので、結局2人で30ポンド(約6000円)かかった。地下鉄のある時間にヒースロー空港に到着すれば、2人でも7ポンド(1400円)ぐらいですんだのだが、まあ、それでも0.99ユーロにはかなわない。

 特にこの航空会社をおすすめしているわけではない。深夜に到着するのは危険でもあるし、慣れた人でないと使いづらいだろう。しかし、僕が乗った便は若い乗客で満員だった。さて、このライアン・エアー、いつまで続くことであろうか。