安すぎる古本と届かない古本

 ようやく本誌次号の制作が終わり、ほっとしたところで風邪を引いて頭痛で昨日は欠勤した。日曜も出勤していたので代休というところだが、零細企業の社長に代休なんて言葉は意味がない。

 ところで、次号のアジアのカレー特集を組むにあたり、インターネット書店でカレー関連の本をいろいろ買い求めた。こういうときにネット書店は実に便利だが、その中の一冊が漫画『包丁人味平9巻』だった。この巻は「味平カレー完成!?の巻」。新書なんかは300〜500円ぐらいなのだが、漫画本の値段には驚くやらあきれるやら。たった10円。8円というところもあった。もちろん古本である。

 10円で売ったって儲けなどあるわけがない。こんな本を1冊だけ注文するのは悪いなと思ったが、他に欲しい本がなかったので注文した。当然とはいえ、その本は速やかに送られてきて、なんとハトロン紙でカバーまでしてあった。これじゃ売るだけ赤字ではないか。なにも10円でなくたってよさそうなもんだと思うが、もしかしたら9巻だけ1冊買う人はあまりいなくて、まとめて全巻買う人が多いのかもしれない。それだとまあ1冊10円だとありがたいだろうが、それでも10円じゃなくたってねえ。

 値段が安すぎると文句を言うのは、僕が出版業界の人間だからではない。例えば100円ショップでもCDをそんな値段で売ることはないだろうと思うのと似ているから、あながち業界的発想とはいえないと思う。簡単に言えば、そんな値段でたたき売られるものを作らされるほうがたまらないと考えるのだ。それでも100円CDは儲けが出るらしいが、10円漫画はどう考えたって赤字なんだから、なにも赤字で売らなくてもねえと思うんだが。

 で、他にも新書を数冊買ったのだが、その中の一冊が届かない。以前読んだ本だったので、内容はわかっていたが、表紙の写真を撮る必要があったので購入したのだ。しかし、締切日が迫っているのに、なかなかその本が届かずに困っていると、書店から電話があって、確かに送ったのだが、宅配便屋に問い合わせてみると、途中で行方不明になっているという。

 それから、何度も書店や宅配便屋から捜索の経過を知らせる電話があって、たった350円の古本新書一冊のために、数多くの方々が、手間ヒマ電話代を投入することになった。まことに気の毒としかいいようがないが、なくしてしまったのは宅配便屋なので、いちばん気の毒なのは(金を払って本が届かない私を除けば)書店である。その本は安いけれどもう絶版なので、宅配便屋も新しい本を買って返すというわけにはいかないのだが、どうしてくれるのだろうか。350円の売り上げのために、こんなことをやっていたら、誰もが消耗するだけだよな。