ヨン様ファンは日韓の架け橋か?

 テレビを見ても、週刊誌の見出しを見ても、ヨン様ヨン様の大ブーム。ま、結構なことだと思うが、いわゆるこの「韓流ブーム」が韓国でも驚きをもって迎えられているという話は読者もよくご存知のことだろう。そりゃびっくりするわな。

 先日の朝日新聞(04/12/5)では、「風 ソウルから」というコラムで、ソウル支局長の市川速水という方が、そういった「韓流ブーム」についておもしろい記事を書いていた。日本人のおばさん連がぺ・ヨンジュンに群がる姿を見て、嫌悪感をもよおす人もいれば、理解できないと首を振る人もいる。その一方、中央日報は「韓国を正当に評価する日本を見習え」と書いたそうだ。

 あるタクシー運転手は「日本人は韓国の歴史も知らないで、韓国のことを理解するつもりがあるのか」と言ったそうだが、そりゃそんなつもりがあるわけがない。ぺ・ヨンジュンのファンである方々は、あくまでヨン様が好きなのであって、韓国が好きなのではないんだから、歴史なんか学んでいるわけがないだろう。ちょっと前にはヨン様より規模は小さかったが「レオナルド・デカプリオ・ブーム」もあった。レオ様ファンがアメリカの歴史を勉強したかといえば、するわけがない。それと同じだ。

 レオ様ブームのときに、アメリカ人が、「あいつらはアメリカの歴史も知らないで」と怒ったという話は聞かなかったが、なぜ韓国の場合だけ「歴史問題」が出てくるのかといえば、もちろん「過去の不幸な歴史」があったからだ。おもしろいのは、このあとに出てくる記事の内容で、実は韓国人だって自分の国のことをよくわかっていないという指摘があったことだ。以下、記事を引用する。

──韓国では日本と同様、定住・永住外国人参政権がない。在日韓国人朝鮮人はどちらも投票できない。(中略)「移民の歴史は100年を超すが、いつまでも(在韓華僑は)異邦人。声を上げれば不利益が返ってくる。大学を受けにくい。障害者が手帳を持てない。インターネット取り引きができない。当局に訴えると、嫌なら国籍を取れと言われる──。私の隣の女性が「在日より、よっぽどひどい」とため息を漏らした。

 日本に対して過剰なまでに反応する韓国人の「在日韓国人朝鮮人に対する差別問題」だが、実は自分たちの国も同じだったことに、ほとんどの韓国人は気が付いていなかった。このことは、『病としての韓国ナショナリズム』(伊東順子洋泉社新書)にも出てくる。

──韓国人に嫁いだ外国人女性には1年(場合によっては2年)の切り替えの配偶者ビザが与えられるが、それとて就労などの自由はなく、すべて法務部の許可をとらなければならない。友人に韓国人男性と結婚し、韓国で暮らしながら本を出した日本人がいたが、彼女も「資格外活動」ということで罰金をとられ、なおかつ「こんどやったらビザの延長をしてやらない」と脅されたという。彼女がその話をまわりにしても、「まさか、本も出せないなんて……」とみんな半信半疑だったというが、韓国人はアメリカでのグリーンカードの取り方や日本の指紋押捺問題についてはくわしくても、自国の外国人についてはまったく知らない。

 まあ、日本人だって、在日外国人がいかに差別を受けているかなんていうことを知っているとは思えないので、韓国人がそうだからといってバカにはできないんだけれど、日本人だって韓国人だって、その当事者でないとなかなかわからないのだ。ましてや、ヨン様ファンが「韓国を正当に評価」しているなんてのは勘違いもはなはだしい。韓国を正当に評価するというのは、韓国の都合のいいところだけを評価し、悪い部分は見ないということではないのだから。

 日韓関係になると、なにかにつけて(例えばオリンピックやサッカーのW杯)、これで日韓関係が改善される(かもしれない)と、希望的観測が流布される。ぜんぜん意味がないとはいわないけれど、韓国人人気俳優がその任務を背負わされるのも、ずいぶん気の毒なことだなと僕は思うし、そのような言説もほとんど信用できないなと思う。ヨン様ファン、日韓関係の改善に役立ちたいなんて思ってます?