自分へのごほうび

 歳末ブランド商戦 キーワードは「自分へのごほうび」であるという記事を見つけた。
http://www.mainichi.co.jp/eye/sanmen/200212/23-01.html

 テレビを見ていると、最近こういう言い方ってはやりなのか、とくに女性の買い物客が、高級ブランド品などを買うときに、「自分へのごほうびに」なんてセリフをはくのを幾度も見かける。近頃僕の最も嫌いな言葉だ。

 僕の記憶では、マラソンの有森選手がオリンピックのインタビューで、初めて自分をほめてあげたいと思いました、という発言をしたのが、最初だったような気がするんだけど、これ以降、「自分をほめてあげたい」とか、「自分へのごほうび」といった物言いが増えたんじゃないか。

 有森選手のように、あるいは他のオリンピック選手でもいいんだが、極限まで苦しいトレーニングを積み重ねて、その結果ようやくメダルを手に入れることができたとき、あるいは自分が納得できるプレイができたときに、このようなセリフを述べるのはすがすがしいと感じる。

 しかし、たいした苦労もせず、ただ高級ブランド品を買いたいという「言い訳」に、こんなセリフをはかれると、それは単に甘ったれたナルシステッィクな言葉にしか聞こえない。え? 私だって、それなりに苦労してますよって? 誰でもしているような苦労だって、自分には「すごい苦労」と感じるかもしれないが、それを人前で言葉にして発するほどの苦労なのか考えてからいってほしいと思うのだ。

 「それなりの苦労」ってのは、その人にしかわからない苦労でしかなく、わざわざ他人に「だから自分をほめてあげたい」だの「自分へのごほうび」だの言うこともなく、心の中でそうつぶやいて買えばいいではないか。ブランド品が欲しいんだったら、自分で稼いだ金で買うんだからいちいち言い訳なんかするんじゃない。「自分へのごほうび」にお買い物しましょうというキャンペーンをはられて、いそいそと買い物をしている人々の姿なんて、想像しただけで気色悪い。