昔の漫画「怪獣」

 BBSでちょっと話題になったので、昔の本を引っ張り出してきた。これが『だっくす』(1978年11月号)です。発行は清彗社で320円。古本屋ではだいたい1500円ぐらいで販売しているようだ。

 この号の特集は樹村みのりさん。僕はこの雑誌の編集長ではなかったが、樹村みのりさんの大ファンだったので、この号だけは編集をやらせてもらって制作した。発売当時は全然売れなくて、たしか『だっくす』返本率の新記録を作ったような気がする。しかし、バックナンバーでじりじりと売れて、結局2年ぐらいで完売したと聞いている。

 このとき、樹村さんと真崎守さんとの対談をお願いしたのだが、なんと録音機の電池が弱っていて、全然録音されていなかったのにはあせった。真崎さんの記憶力で、対談は無事に復元されたけれども、今でもこの恐怖感は脳裏に焼き付いて、座談会や対談を録音するのはどうも苦手だ(なんていっていられないのでやってますけど)。

 当時の「だっくす」は、スタッフは全員ボランティアの無給、原稿料もなしだったが、それでも300ページを超える雑誌だったので、320円では毎月100万円単位の赤字だった(らしい)。スタッフにはそういうことは聞かされていなかったので、詳しいことは分からないのだが、それがもとで会社はダメになっていった。何もかもが素人の集団だったのだ。今では有名作家になったまついなつきさんもスタッフの一員だった。

 いくら働いても儲からないのでは、当然給料などでない。それで僕も大学を卒業すると同時に辞めざるを得なかった。ここでやったのは2年足らずだったと思うが、それでも制作や編集でさまざまなことを教えてもらったし、本当に楽しい時代だった。

 この号には、講談社漫画賞をとった森雅之さんの短編が7本。秋竜山さん、畑田国男さんのヒトコマ漫画、それから最近テレビゲームでヒットしているRPGゲーム「ポポロクロイス物語」の原作である田森庸介さんの「竜が行く!」も掲載されている。